DXがもたらす新たな価値と顕在化する問題点

このごろ聞くことが多くなった言葉のひとつにDX(デジタルトランスフォーメンション)があります。これは業務を単にデジタル化する以上の意味をもつ言葉です。

新たな価値とは以下のようなものがあります。

  • ビジネスモデルの変革
  • 既存製品・サービスの付加価値向上
  • 新製品・サービスの提供
  • 顧客満足度、維持率の向上
  • 業務効率化による生産性向上

一方、DXを社内で推進するに当たり、以下のような問題が同時に見えてきます。

  • ブラックボックス化した既存システム
  • 資金・人材の不足
  • ITに関する戦略の不存在、不備

ブラックボックス化はどのように問題か

一般にブラックボックス化するとシステムの使い方や処理内容に関して、社員間の業務知識量の偏りが極度に大きくなります。
他の社員には業務内容が見えにくくなり、担当者のみでリスクの大きい様々な処理が可能になります。
特に、少ない人員で業務を回さざるを得ない中小企業では内部統制上の問題が発生する可能性が高くなります。
事業資産を直接管理する基幹システムでは内部統制が弱くなると扱っている資産の横領などの不正が起きやすくなります。

ブラックボックス化した既存ITシステムはさらに以下のような実態を伴っていることが多い

(1)システム仕様が分からないことにより、システム(機能)の有効活用やシステム更新の障害となる
(2)蓄積されたシステムデータの入力内容が不完全だったり、データ間の整合性に欠けたり、目的適合性に乏しい
(3)基幹システムデータの出力・加工後に、第三者による十分な確認が行われぬまま、後工程の他システムに投入されている、もしくは、そもそもそのような処理について担当者以外は知らない

ブラックボックスを解決するには”見える化”

ブラックボックス化解消には現行業務の棚卸しや業務改善を行い、文字通り見える化を行うことが目標となります。
なお、業務そのものは担当者を観察しても把握できないことも多いので、業務フローの中で進捗を管理者に見えるようにすることが、見える化の代替となることもあります。
まず行うべきは、業務の棚卸しですが、多くの企業では日常的に業務の棚卸しをすることはまれで、実際に行うタイミングとしては業務システムの導入・更新時に合わせて行うことが一般的で、そのような機会を逃さずに行うことが必要です。

また見直す際には、“ECRS”といわれる視点を導入すると、業務の整理が容易になります。
Eliminate(廃止):業務の目的目標を見直し、あるいは効果を考えて、不要な業務を廃止する
Combine(統合):複数の業務をまとめて、同時に処理することで効率化する
Rearrange(再配置):業務手順や担当者の入替えなど、業務再設計を行うことで効率化する
Simplify(簡素化):ECRで整理した業務をさらに分析し作業や活動を簡素化し、業務量を減らす

さらに基本的に承認を要する事項を明確に定めておくこと。すなわち社内の決裁権限を定めて、社内に周知することも必要となります。

実際に業務フローを見える化する際には

業務フローを見える化する際には、使用する業務システムを通じて行うことが通常ですが、紙ベースでの書類回付や承認申請をデジタル化する目的で、いわゆる専用ワークフローシステム(業務システムとは異なり、ワークフローに特化したシステム)の導入が増えています。この専用ワークフローシステムを導入する際の注意点としては、業務フローは、「実業務の流れ」とその業務の進捗に必要な「承認申請」などが、システム上で一体化しているものの方が業務がスムーズに進みます。

業務フローを定義できれば人材不足への準備に有効

人材の確保は今後の中小企業にとって、重要な課題です。新型コロナウィルス蔓延を契機に、急速に普及しつつあるテレワークは、企業の採用活動において、応募者側の選別ポイントになることは間違いありません。テレワークの導入が困難な会社は、他社と比べて不利な立場に追い込まれる可能性が高いと考えられます。そういった場合でも、業務システムを使った業務フローがしっかり定義できていれば、業務の切り出しも容易になるので、人材を採用せずとも外部委託化も可能になります。

(※本記事は経営ノウハウの森に寄稿したものを要約、再構成したものです)