何を知るべきか を明確にする

企業活動は非常に多面的ですので、いくつかの切り口で事業活動を捉える必要があります。
主要な切り口として、3C分析と言われる顧客、自社、競合の視点があります。
また自社の視点だけでも、製品・サービス、経営資源(ヒト・モノ・カネ)があります。

企業活動をはかる包括的なフレームワーク

ともすれば、各部署ごとで異なる視点で事業活動を測る指標を導入しがちですが、
企業全体で見ればそれらはお互いに関連するものです。負の相関を生まないように全体的に見ることが重要です。そのフレームワークとして、有名なものにバランス・スコアカードがあります。バランス・スコアカードは次の4つの視点から企業活動を測る指標を設定するものです。

【 財務】 企業活動の経済的成果を測定するもの
【顧客】 顧客・市場をセグメント化し、その目標とするセグメントでの業績を評価するもの
【業務プロセス】 顧客満足、財務目標達成のために、経営者がいかにビジネスと業務の改善をしてきたかを示す
【学習と成長】 企業業績は従業員のスキル、モチベーションに依存、企業の長期的な成長のための従業員、システム、手続きの改善状況を示す
たとえば財務の視点は以下のような指標を設定します。

財務の視点
主に(収益性、安全性、成長性)といったものを意識
収益性:企業がどのくらいもうけているか
安全性:企業の支払い能力がどのくらいか
成長性:過去と比べて、伸びているか
財務の代表的な指標
①売上高、 ②利益額、利益率 ③資金繰り(キャッシュフロー)

指標の設定

指標はKPI(Key Performance Indicator)ともいわれますが、さまざまなものがあります。
まず自社にあったものを選定します。
指標は財務数値、非財務数値、あるいはその組み合わせであることもあります。
財務数値は、金額データがメインとなり、経理システムに多くの場合、記録されています。
非財務数値は、金額ではなく、量(回数、件数、またそれをつかった割合)となります。

設定の際の考慮事項

どんな指標を、に加えて、いつ、どのように入手するかを考えておく必要があります。指標データは一度取って終わりではなく、定期的にチェックする必要があるからです。
また、実績値を入手してよしとするのか、目標値(予算数値)をあらかじめ設定し、差異分析、対策をとるのかも決めて、体制をつくることも重要です。

中小企業で管理会計導入がすすまない理由

ある調査によれば、予実管理ができている中小企業は2割程度だそうです。管理会計が威力を発揮するには予実管理をベースとしたPDCAサイクルが重要です。管理会計が導入されていない、あるいは機能していないのは、この辺にも問題がありそうです。

管理会計の導入自体にも困難さ

1何を会社として追うかで目標(指標の重要性)が変わる。
→会社の戦略が立っていなければ、追うべき目標も見えない。

2自社に適合した管理会計の仕組みを構築することが求められる。
→パッケージソフトを入れれば、簡単に導入できるということにはなりにくい。

3自社のビジネスモデルや実態を把握しているのは誰か
→管理会計導入には経営の視点が必須です。中小企業において、その視点を持っているのは社長に限られることが多く、忙しい社長が管理会計導入に時間を割けないことも多いです。

4数字を見て終わりではない
→アクションが伴わなければ、導入しただけで終わってしまうでしょう。

5ビジネスモデルの変化は早い
→経営環境の変化により、見ていくべき指標が変わることは往々にしてあります。一度、導入して終わりではなく、定期的に、設定する指標やフォローアップ体制を変えていく必要があります。

ITを導入する際の留意事項

業務用システムを導入する際には、管理会計の視点も忘れないようにすることが重要です。

経営情報を取るための留意点

業務用システムを導入する時には、ビジネスモデル上、重要な情報がシステムから取得できるようにシステム設計、業務設計する。

IT製品・サービスを選ぶときは情報にフレキシブルにアクセスできるものを選ぶ。最近のクラウド製品ではデータの取り出し方が限られることも多いので、要注意です。

まとめ

管理会計導入には、

  • 会社の方向性(戦略)の明確化
  • 導入後のフォローアップ
  • ITの効果的な利用

が重要であることを見てきました。
デジタル化が進む世の中、企業経営も数値をしっかり見ながら、機敏に対応するという、時代に見合った舵取りがますます必要になってくると思います。本稿が参考になれば幸いです。