最大の課題は、ITに関する経営資源が限られていること
中小企業は本業に携わる人員を最大限確保するため、管理業務やITの保守にまわす人員が少なくなることが一般的です。経営者以外に、ITに関する知識を補完したり、活用を促したりする人員がいないことが特徴ともいえます。これらの問題は、ある程度外部にコストをかけられれば解消可能ですが、ITにかけられる潤沢な予算があるわけでないのもまた中小企業の特徴といえます。
そんな問題に対して、経営者としてどのように対応すべきでしょうか?
人材・資金の不足
ITシステムの知識は大きく分ければインフラ(インターネットなどの通信基盤)、ハードウェア(サーバー、PC、その他の機器)に関するもの、アプリケーション(業務用ソフトウェア)などに区分されます。インフラやハードウェアについては、会社ごとに設定の相違はあるものの、IT製品毎に汎用的な技術知識が適用可能で、外部にも委託しやすいといえます。
インフラやハードウェアは外注、業務ソフトウェアはできれば社内に精通した人
多くの中小企業では、インターネット接続やプリンターの初期設定など、ITシステムの運用面に関する多くのことを外部委託しているケースが多いです。こういった業務は一度導入が済めば、しばらくは設定変更の必要がなく、実施には一定の専門知識を必要とするものの、常時作業があるわけではないので、専門スタッフが常駐している必要はあまりありません。
一方、販売管理などのソフトウェアは、多種多様な業務アプリケーションがあり、それぞれ特色や業界に応じた特徴を持っています。
このアプリケーションのサポートは一義的には製品開発をおこなったソフトウェア会社になりますが、そのような会社のサポートはあくまでも自社製品および関連する業務部分のみです。そのため、自社業務の全体を見渡し、社内のシステム化やデータ活用において意見ができる、会社の業務アプリケーションへの理解が深い人物を配置できることが理想です。
経理担当者をITに強い人材に育成する
会社の業務アプリケーションシステムへの理解が深い人物の候補者として、IT業務に専属の人材が配置できればベストですが、実際には他の業務との兼務が現実的です。このIT業務を兼務する社員は、一つの観点では経理業務に関わっている人物があげられます。それは、経理業務は社内の金額データが最終的に集まるところであり、社内の情報の流れを理解しやすく、経営者に近い立場にいる点、さらに経理担当者が上流のデータにスムーズにアクセスできるようになれば、経理業務の効率化にもつながり、モチベーション向上につながることもあります。
ただ、経理人材がITの素養を身につけたりするための一定の時間がとれるように、ルーチン的な経理業務はパートタイマーや外部委託化するといったことは検討する必要があります。
今後ますますDXが進むことを考えると、経営戦略を実現するために必要なデータとその活用、それに適したITシステムの全体設計を描ける体制・人材、業務に精通したデジタル(経理)人材を確保することを考えてみてはどうでしょうか? このデジタル経理人材を軸として、社内のITシステムに関する改善案や施策を練り上げ、外部人材の力も借りて、実現に推進していく流れとなります。
最後は経営者自身がITに強くなるしかない
そのような経理人材にも恵まれていない中小企業であれば、経営者自身がその役割を務めるか、ITに強い社外アドバイザーから長期的な支援を受ける必要があると思われます。
資金不足についての対応
- 補助金制度の活用
- 導入費用の削減(業務内容の整理、ライセンス数の削減)
- 事業計画への組込とフォローアップ
補助金をつかったIT導入は一見して資金負担も少なく、導入して終わりという結果になりがちです。IT導入補助金など、導入後の” 事業実施効果報告”を求めるものもありますが、本来は補助金申請とは無関係に、いわゆる投資対効果を事前に検討しておく必要があります。
(※本記事は経営ノウハウの森に寄稿したものを要約、再構成したものです)